発赤(ほっせき)を甘く見てはいけない【vol.054】

以前も発赤について取り上げました。

その中でちょっとだけ触れているのですが
発赤は床ずれの初期症状とは限らない、と書きました。

DTIと言うケースもあると。

DTIはDeep Tissue Injury
深い、組織の、損傷を指します。

二番目に講演された堀田由浩先生が
このDTIと発赤について説明していました。

床ずれには
表皮⇒真皮⇒皮下脂肪⇒筋肉のように
体の中に向かって悪化するタイプと

筋肉⇒皮下脂肪⇒真皮⇒表皮のように
体の中から外に向かって悪化するタイプがあります。

DTIは後者のタイプです。

●牛のお尻で実験
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床ずれは圧迫とズレの力が体にかかった時に起こる
内部組織の疎血性壊死ですね。

いわゆる、酸欠・栄養欠による細胞死です。

筋肉が初めに損傷されるのはナゼか?
ある実験の話がありました。

北海道大学のある先生が牛の尻に電極を三箇所入れ
外力がどのように内部組織に伝わっているか調べました。

外力とは外から体にかかる圧迫やズレの力のことです。

実験結果から外力が内部組織に伝わると
骨に近い筋肉で最も強い圧力がかかっていることが分かりました。

このデータをコンピュータで解析したところ
内部組織の歪方が分かりました。

応力が目に見える形で検証されたのです。

応力とは、体に外力がかかった時
内部組織に生じているだろうと推定される力のこと。
圧迫応力、引っ張り応力、剪断応力、の三つあります。

これらのデータを基に
DTIが起こっていく過程を解説してくださいました。

●DTIの過程
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外力が骨突出部にかかると内部組織に応力が発生。
応力は筋肉と骨がくっついているあたりで最も大きく作用する。

この箇所で筋組織の壊死が起こる。

壊死した細胞で細菌が増殖。
体には炎症反応が起こり、
発赤、熱感、腫脹、疼痛などの症状が現れます。

体の深いところで起こった床ずれは
発赤の炎症反応が視覚確認できません。
初期のDTIは、微熱が続きます。

床ずれ好発部位、いわゆる骨突出部に
発赤は見られないので床ずれではないと判断。
微熱の原因が分からない状態が続きます。

深部の損傷が次第に広がりはじめます。
体内に細菌や膿などの異物があるので炎症反応が続き
微熱が続きます。発赤はまだ見られません。

床ずれが発生していることに気づかず
床ずれを発生させている原因が取り除かれないため
床ずれは更に悪化します。
どんどん表皮に向かって床ずれが大きく広がっていきます。

あれっ?発赤があるぞ!と気づいた時には
かなり重度の床ずれになっています。
この間、約一ケ月が経過していることもあります。

しかし、発赤だから床ずれの初期と判断されたりします。

それから一週間後、突然
発赤箇所から膿が噴出し、ぱっくりと床ずれが顔を出しました。
床ずれは鍾乳洞のように内部組織に空洞を作っています。

これがポケットタイプの床ずれです。

発赤の見られる段階では
その床ずれが軽度のものか、重度のものか、判別が難しい。

発赤を甘く見てはいけませんね。

まして、床ずれが見つかるまでにはタイムラグがあり
どこで作ったのか、特定できないケースもあります。

床ずれを作った原因が
在宅にあるのか、施設にあるのか、入院中の病院にあったのか
体位変換の仕方や介助方法など、一つ一つ検証する必要があります。

「床ずれの治療でいっこうに創(開いた床ずれの傷口)が閉じない場合
大抵はズレの力が創にかかっています。

それは体位変換の介助の仕方が悪いケースが多いのです。

ズレの力さえ取り除ければ創はすぐに閉じます。」

ズレの力を取り除けば床ずれは治る
堀田先生のこの言葉、嬉しかったですね。
私も同感です。

●モデルに指名されました^^
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堀田先生の講演には、おまけがあるんです^^
面白いご縁だと思いました。

電動ベッドで背上げ・背下げ後の
背抜きのデモンストレーションで
私がモデルをつとめました(笑)

先生に突然指名され、
受講者全員の前に出てベッドに寝たんです(笑)

堀田先生:「どうですか?感じは?」

私:「辛いです。背中が抑え込まれてるようです。」

堀田先生:「では、背抜きをしますね。今度はどうですか?」

私:「楽になりました。でも、お尻がまだ辛いです。」

アシスタントの方がグローブを使った背抜きをしてくれたのですが
尻抜きをしてくれなかったので
尻抜きを誘う答えを返しました。

また、背下げでは一気にして平らに戻されたので

私:「頭に血が上って気持ち悪くなります。
途中で背下げを止めて欲しかったです。」

と、背下げで注意して欲しい点を
それとなく向けられたマイクに言いました。

受講者の皆さんは気づいてくれたかな…。

職場に戻ったら
実際に背上げや背下げ、背抜きを体験してくれるといいな…。

尻抜きも忘れずにね^^

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