わくわく直観堂の草野博樹です。
拘縮等がない方の、基本となるポジショニングについて見ていきます。
イラストをに準じてご説明します。
ポジショニング実施前が上、ポジショニング実施後が下です。
90度側臥位のポジショニングは頭部と両上肢と左下肢をクッションの上に乗せるのが基本となります。
要点は、赤線で示した脊柱線をまっすぐにした姿勢を作ることです(脊柱線とは、脊柱に沿ったまっすぐな線のこと)。そのためにはクッションの高さがポイントとなります。イラストで言えば、頭部を乗せるクッションの高さ、左腕を乗せるクッションの高さ、左脚を乗せるクッションの高さがポイントです。右前腕を寄り掛かけるクッションの形状と高さは、肘と肩へ掛かる負荷を排除し安楽さを与えます。
ポジショニングの要点は、以下の4つにあります。
マットレスの選定が重要になります。マットレスは、柔らかすぎず、右肩と右大転子に掛かる圧を十分に分散しうる素材と厚みのあるものを選択します。。
「重量をクッションに移す」の意味の詳細は次の項で説明します。
枕の高さで決まります。頭部から頚部、そして肩にかけての隙間を枕で埋めるようします。頚部の負荷が軽減されると同時に、下になった肩への負荷も軽減されます。
せっかくポジショニングをしているのに、ポジショニングの効果が見られない時は、クッションの高さが適当か、マットレスは適切か検証してください。
体幹にぶら下がるイメージをモデル化した、左のイラストでご説明します。
頚部で繋がりぶら下がる頭部、肩関節でぶら下がる上肢、股関節でぶら下がる下肢が、それぞれにピンと張った糸でお重りのようにぶら下がっています。体幹自体の重量のうち、肩にはAkgが掛かり、大転子にはBkgが掛かっています。
ポジショニングをしなければ、体幹にぶら下がるそれぞれの重量が体幹に乗っかります。100%全部の重量が乗っかるわけではありません。体幹に接している部位(マスとも言う)の一部の重量が体幹に乗っかります。
イラストでは、頭部のXkgと左上肢のYkgは右肩に掛かり、左下肢のZkgは右大転子に掛かっています。こうして、
右肩に乗っかる重量は、(A+Z+Y)kg 、
右大転子に乗っかる重量は、(B+Z)kg になります。
このぶら下がっている重量をクッションの上に乗せ、体幹に乗っからないようにすると(これを「重量を移す」と言う)、左のイラストのように右肩と右大転子には体幹の重量のAkgとBkgしかかかりません。
つまりポジショニングにより
右肩に乗っかる重量は、(A+X+Y)kg → Akg に下がり
右大転子に乗っかる重量は、(B+Z)kg → Bkg に下がりました。
私の実験結果では、大転子に掛かる圧で40%程度減少する結果を得ています。ポジショニングをしていない時の右大転子に掛かる圧は、左下肢のぶら下がりが40%関与しているようです。
ポジショニングしていない時の右肩に掛かる圧は、頭部のぶら下がりが30%程度関与し、左上肢のぶら下がりが10%程度関与しています。右肩の圧を軽減するためには何より頭部のポジショニングが重要であることが解ります。左上肢は胸郭の広がりを抑えるように働き、呼吸が浅くなります。左上肢は圧をクッションに乗せることで、胸郭のひろがりを助け、呼吸を深くすることに貢献しているようです。
それではこれから頭・上肢・下肢のポジショニングの要点を一つずつ説明します。
脊柱線の延長上に頚部と頭部が来るように枕の高さを調節します。首と肩に出来た隙間を埋めるように枕の形を整え、首と頭部を一緒に支えます。
下になった上肢の格好・肢位(しい)は、肘を曲げて手を顔の前に持ってきます。この時、前腕を三角のクッションに乗せて、手を目の高さ程度まで上げます。こうしないと肘と肩に負担が掛かります。
上になった上肢の肢位は、肘を90度程度に曲げてクッションに乗せます。手はクッションの端のなだらかな下りカーブに沿わせておきます。クッションの高さは上肢が肩関節と同じ高さになるように調節します。
下になった下肢は軽く膝を曲げて伸ばします。
上になった下肢は、股関節と膝を90度程度に曲げ、クッションに乗せます。足はクッションの端のなだらかな下りカーブに沿うように置きます。クッションの高さは下肢が股関節と同じ高さになるように調節します。
体交・圧ぬきグローブを使用して、ポジショニングの最中に発生した皮膚のツッパリを取り除く「圧ぬき」をします。併せて、着衣やシーツのシワを伸ばします。
赤で示した個所以外にも、マットレスと接している体の部分も「圧ぬき」と、着衣・シーツのシワ伸ばしをします。
「圧ぬき」をしないと不快感が残り、気持ちよくなりません。
以上で90度側臥位のポジショニングは出来上がりました。いわばここまでがPDCAサイクルのPDの部分です。
ここからCAへと回します。Plan(計画して)→Do(実行に移し)→Check(効果を確認し)→Action(次の行動をとる)がPDCAサイクルです。ここからよーく利用者さんの状態を観察し、ポジショニングの効果が現れているか確認し、不具合があれば次の手を打つ段階です。良く観察してください。
時間の経過とともに利用者さんが苦痛の表情を浮かべていないか、呼吸が苦しそうでないか、クッションがつぶれて初期の状態が崩れていないか、予想した効果は現れているか(拘縮の改善や筋緊張が緩んできたとか)どうかも確認します。これらの観察を続けてポジショニングは適切だったか否かを判断します。
PDCAサイクルの繰り返しこそが、ポジショニングの質を上げる唯一の方法だと考えています。
以上、介護術の伝導士こと、草野博樹でした。
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